ドキドキしていた……
アキラの通っている高校は、学力的には底辺の学校で、ヤンチャな生徒も多かった……
1年生のアキラは、職員室へ行く用事を済ませ、自分の教室へと向かっていた。
トイレの近くを通りかかった時、3年の仁先輩が声をかけて来た。
ジン先輩はロックバンドをしていて、アキラの憧れの先輩だった。
「アキラ!ちょといい!」
「何すか?仁先輩!」
「ちょっとここで見張っててくんない」
「何でッスか?」
仁先輩がの右手には缶コーヒーがあった。
「いいから……先生来たら教えろよ!」
と言ってトイレに駆け込んで行った……
仁先輩の後を追って、数人の他の先輩がトイレへと駆け込んだ……
アキラはピンと来た。
「先輩が持ってた缶コーヒーの中身はアンパンか〜」
と同時に、見張をさせられたヤバさがドキドキへと変わっていくのがわかった……
心臓が胸の皮膚を押し上げているのがよくわかるくらいドキドキしていた……
幸い、先生は来なかったが、予想していた通りの展開になった。
トイレから出て来た仁先輩達は目がすわり、若干のヨダレとアンパンのただならぬ臭いを帯びていた。
アキラは言った……
「仁先輩……もう行ってイイっすか?」
アンパンのせいで、幻覚を見ている仁はアキラを怪物と勘違いして、顔面に全力の拳を打ちつけた……
「ゴキ」
と言う鈍い音がして、アキラは床に倒れた……
他の先輩が止めに入り、それ以上の攻撃はなかった。
他の先輩が言った……
「もういいよ、ありがとな!」
鼻血の出た顔を押さえながら、教室へと帰るアキラは思った……
「俺は、アンパン絶対しね〜」
(アンパンとは?)
シンナー遊び及びシンナー自体を指す。
空き缶やビニール袋に入れ吸引することで、幻覚や幻聴などを引き起こす。危険な劇物で、死に至ることもある。
次の日、仁先輩は普通に言った……
「おはよう、アキラ」
昨日の事は何にも覚えちゃいない。
憧れの先輩に戻った……
この内容は事実を元にしたフィクションです。
登場する人物は存在しません……